NonesuchやOcolaといったレーベルから出ていたガムランのLPを集め始めた80年代初頭、ニューウェーブやオルタナティブのレコードを買い漁る一方で、ガムランと共によく聴いたのが Jon Hassellだった。
Jon Hassellは、Enoとのコラボである Fourth World, Vol. 1: Possible Musics(1980)が有名だが、その後も、サンプリング・ループによる呪術的リズムにHassell の特異な奏法のトランペットが共鳴する、仮想民族音楽的作品を連続してリリースしている。
Dream Theory in Malaya (1981)
Aka / Darbari / Java : Magic Realism (1983)
この2作は 前作を踏襲しつつ、よりアブストラクトな民族音楽色を強めている。直接バリを想起させる内容とは言えないが、 Aka/Darbari/Java : Magic Realismではガムランのサンプリングが効果的にコラージュされ、カバー・アートもバリをモチーフにしている。
カバー・アートは両方とも、Miles DavisのBitches BrewやSantanaのAbraxasのジャケットでも有名な
Mati Klarweinの作品で、原画の制作年から推察すると、これらのアルバムのジャケットとして依頼を受け、描かれたものだろう。
原画:Alexander's Dream (1980)
ペンジョール(竹を使った飾り)や市松模様の布(聖性を示すデザイン)、畦にあるデウィ・スリ(農耕神)を祀る祠などから、バリの農村のコスモロジーがモチーフであることは一目瞭然。
原画:Soundscape (1982)
このライステラス(棚田)は必ずしもバリとは特定できないが、地形的ダイナミズムや前作との繋がり・内容から、どうしてもバリ島中部のライステラスを想起してしまう。まあ、その当時はまだ実際には行ってないわけだが、バリ=ライステラスという情報はどこからか仕入れていたわけである。
ちなみにこちらは昨年行った際のジャティルウィ(バリ島中西部)のライステラス
この頃、有名なガムラン・グループ 「Tirta Sari 」が初来日。公演には行けなかったが、すぐにNHKでTV放映され、ここで初めて舞踏とセットのガムランの凄さを目の当たりにして衝撃を受ける。また当時はミュージシャンがこぞってバリ島に向かった時期でもあった。そんな影響もあって、私のバリ島通いが始まった。