2011-12-30

Die Landschaft und ihre Kinder ( 1 )

私がバリ島に通い始めてもう25年。そのきっかけになったのが、ロシア生まれのドイツ人アーティスト、Walter Spiesの「Die Landschaft und ihre Kinder」(風景と子供たち)という絵だった。

80年代初頭、たまたま見かけたこの絵に大いに心惹かれたのは、「ジャワの東」「4時の悪魔」などの映画、マジック・ランタンで見た「ジャングル・ブック」など、熱帯を舞台にした物語の影響があったように思う。ジャングル・光と影・火山島といったターム、神秘的でマジカルな空気感・・・。この作品には幼い頃に刷り込まれた熱帯への憧れが具現化されていて、私にとってはこの作品=バリ島のイメージだった。

この絵自体も、1930年代を通じてバリに住んだSpiesが、太平洋戦争中に敵性外国人として収監されたスマトラ島の強制収容所で、当時の自宅兼アトリエがあったバリ島中部のイセ村を思い浮かべて描いたもの。農夫と深いジャングル、遠くに霞む霊峰アグン山やライステラスなど、彼なりのバリ島のイメージが詰まっている。


彼の生涯については下記の書籍に詳しい。

・バリ、夢の景色 ヴァルター・シュピース伝 坂野 徳隆著 (文遊社 2004)

・バリ島芸術をつくった男―ヴァルター・シュピースの魔術的人生 伊藤 俊治著 (平凡社 2002)






・ジオラマ論―「博物館」から「南島」へ 伊藤 俊治著 (リブロポート 1986)

Walter Spiesについて多少なりとも掘り下げたのは、日本ではこの本が恐らく最初。鮮烈なグラフィックとともに、昔のバリの写真が印象的だった。著者はこの後、Spiesの足跡を追ったテレビ番組を監修し、出演もしている。オランダの熱帯博物館はいつか行ってみたい場所のひとつ。





・フィールドからの手紙 M.ミード著 畑中 幸子訳 (岩波書店 1984)

書簡集なので、1930年代のバリの様子が文化人類学的論考ではなく平易な表現で紹介されている。バリに憑かれたコリン・マクフィーやミゲル・コバルビアスとはまた違った目線が面白い。バリ滞在時に世話になったWalter Spiesや彼の周りのサロンに関する記述もある。





・スネークマンショー 核シェルターブック(カセットブック・角川書店 1983)

インディージョーンズばりの扮装をした伊武雅刀による、バリを舞台にしたお宝探し企画。後年、実際に行った際にヒントの場所を探したけど見つからず。結局、謎を解いてお宝を発見した人はいたのだろうか・・・。カセットの方にもバリネタあり。





・野ウサギの走り 中沢 新一著 (思潮社 1986)

チベット密教のグルに直接学んだフィールドワークの次に、バリでもバリアン(シャーマン)に師事。バリ人の世界観や文化の中に限って言えば、この世のものならぬ力の存在は全く当たり前のことなので、サヌール上空でのブラック×ホワイトの戦い、ドイツ人研究者の謎の失踪など、ブラック・マジックに関する記述が読み物としては面白い。





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