2011-05-27

フリクション/1979記事:NEW MUSIC MAGAZINE  1979年10月号

1979

ナマなインパクトをもったサウンドを目ざすフリクション
■北中正和氏 ニューミュージックマガジン  1979年10月号
■(ファーストシングルを発売頃のインタビューを含めた記事。メンバーの発言部分を掲載。名前の断りのない発言はレックによる)

その気になれば出せたかもしれない。しかし、レコードジャケットやポスターやチラシまで、自分が納得できるまで関われそうだということでパス・レコードにした。ゴジラ・レコードから出したかったけど、ゴジラの場合は制作費を自分で負担しなきゃなんなくてあきらめた。

(NYに行く前)
ステージをやっても客が少ないし、何も変わらなかった。どうすればその状態が打開できるのかわからなかった。ライヴ・ハウスに出たいと思って、テープを持っていって、聞いてもらうわけ。すると、まだまだねとか、もう少し勉強してから来なさいとか言われる。その繰り返しに疲れてきた。

アメリカのイメージってそれぞれあると思うの。たとえばディズニーランドかもしれないし、スーパーマンかもしれない。オレの場合、ニューヨークから来る電波がいちばん強かった。ちょうどCBGBなんかに新しいバンドがいっぱい出て来た頃で、どういう奴がいるのかすごい見たくなった。
たとえばマンハッタンは山手線の内側くらいの大きさで、バンドや変わった連中がいるのはそのまた一角なわけ。お店だって歩いて行けるところにある。だからCBGBに行くと、いろんな人間が集まっていろんな交わり方ができる。日本にいると、外国の音楽はレコード聞いて、勝手に思い入れするからいやなんだよな。思い入れがどんどん膨らんでいくんだ。日本だとテレヴィジョンもパティ・スミスも神秘的にこういうところに……でも向うへ行ってわかったのは、彼らも同じだということだ。同じ時期に同じ屋根の下で空気を直接通して感じる経験は、レコードとはぜんぜんちがう。それと、ニューヨークに行って、何が必要で、何がいらないのか、オレなりにはっきりしたね。

言葉がうまく喋れないのがあるね。それから、毎日ずっと外人の顔を見てるわけだ。で、ある時鏡を見ると、パッと東洋人の顔が出るわけじゃない。ステージに出た時、客席の奴が、ソニーと叫ぶわけ。SONYなんだよ。
むこうの連中と会ってもうまく喋れないから欲求不満になる。東京のことが気になったしね。その分、帰って出そうと思った。

(ヒゲ)うまく言えないけど、東京に着いたら、こんなとこだったのか!というショックで、吐き気がするほど青くなっちゃった。夜の9時か10時頃に東京に着いたんだけど、会う人全部が顔とか髪とかみんな同じで男も女もないように見えて、こわかった。しばらく部屋から出られなかった。知ってる通りでもちがうふうに見える。歩いている人が歪んでこーいうふうになってる。だから最初は、そうなるだけでいいと思った。

(フリクションに参加した経緯)
(ツネマツ)それまでいたバンドをやめて、モヤモヤしたことがいっぱいあった。レコード制作中にレックたちに会った。彼等はオレの考えてたことを言葉や音で表わしていた。だからフリクションをやる気になった。オレのやってきたこととちがうって感じはあったけど、出来上がってるバンドってことはなかったな。

オレがはいればフリクションはもっとよくなると言ってたらしいね。
自分で来て、オレも入れろとは言わなかった。思っていてもやれない、ひかえめなところがある。東京にいると頭だけのトリップがすごく多くなるみたい。バンドをやっていても、あ、この音は済んだなということで、スタジオの中で終わりになってしまう。ステージまで持っていって、その上で何かが起きるみたいなことが足りないんじゃないかな。体の動きと頭のバランスが崩れてる。

いま東京で、自分たちが見てもインパクトがあると思うバンドにしたい。ナマという感じのバンドにしたいわけよ。ただ、空気を通ってビリビリッとくるようなものになりたい。日本のバンドって、ステージ下りて、ふだんの生活に帰った時に変わり過ぎちゃう気がする。それをもっと一直線にしたいわけ。昔の村八分なんか、ナマナマしかったでしょう。ああいうナマ。今、そういうショックみたいなのがない。頭のほうが勝っちゃってるみたいで、やっていて
もそこでやってるのを感じない。考えたことをただやってるだけみたいなバンドが多すぎる。

(ヒゲ)みんなストレートじゃなさすぎる。

ナマというのはストレートなんだ。すべてもとになるのはニオイみたいなものなんだ。音楽にも人にもニオイがある。色といってもいいんだけど。どれを選ぶのかは嗅覚みたいなものだな。そこで変に頭を使うと、本当に感じてないものを拾っちゃう。誰でも拾ってると思うよ。このレコードがいいとか。あ、これでOKだと気がつく、ビリッとわかったというところまでやってる奴のは面白い。オレたちもそれを出さなきゃなんないわけだ。

(音楽をやってる理由)
(ヒゲ)楽器を持つようになって、そこから離れられないからだね。それ以上言うとこじつけになっちゃうね。
自分を出すというところで音楽を選んでる。いろんなものを全体で感じてるわけだけど、どっかで出さないと欲求不満になるからね。オレたちの場合、それが音楽になってるんじゃないの。いまいちばん楽しめることだし。
(ツネマツ)いきがかり上みたいなことはあるね。いつの間にか離れられなくなった。生まれてきたのもいきがかり上みたいというか。たぶん伝えたいという感じがずーっとあるんだと思う。

(ヒゲ)お尻に火がつくのってあるじゃない?そういう瞬間を見たいね。だって、相当、不満が蓄積されてると思うな。

0 件のコメント:

コメントを投稿