2011-05-27

フリクション/1980記事:rokin' on 1980年7月号

フリクション・インタビュー "日本のロック"なんて言うけど、そんなものどこにもないんだよね。ひょっとすると、買い物カゴ下げたオバサン達の事かもしれないよ。"
■ インタビュアー 渋谷陽一氏、rokin' on 1980年7月号
■(インタビュー記事より、メンバーの発言を掲載。名前の断りのない発言はレックによる)

(坂本龍一プロデュースについて)
あ、それは本当はね、"ミックス"の所に入れたかった。レコード会社も好きにはやらせないんだよね。俺達は帯もコピーもいらないっていったんだけど。プロ デュースからジャケットからすべて自分達でやらなきゃおもしろくないと思うわけ。みんなは楽な方取って、大きなとこにまかしてるけど。彼は知識豊かだか ら、俺達の意図を伝えるメッセンジャー・ボーイみたいな役割だったね。でも最終的には自分達で全部、機械の構造とか知らなくちゃ、ダメだな。例えばアレン ジの段階で全然自分達の思いが伝わってないし。プロデューサーも、この人にやらせたいというのがいるなら別だけど、単に他人まかせじゃおもしろくないね。

(ニューヨークへ行った動機と帰ってきた動機)
見たいなァという感じだったんだよね。いつもレコードとか雑誌とかで情報って入ってくる訳でしょう。生の姿を見たかったんだよね。だから、こっちからだと 状況っていうのはカーテンをすかしてしか見えないわけじゃない。それが向こう行ってわかったのは、パティ・スミスもテレビジョンも同じ人間だって事。そば に立って呼吸している人間なんだって実感できると、今度は自分の方が気になり出すわけ。今までは彼等というのは本の上の人だったんだけど、自分も同じ人間 なんだって思えるのね。それで何かやろうって事で帰って来たんだけどね。俺といっしょに行った女の子なんか住みついちゃったもんね。楽器なんか全然できな かったのに、今DNAというバンドでやってるけどね。簡単にできる雰囲気があるんだよね。
俺は日本レストランでアルバイトしてた。ただ、アーティストだと援助してくれんだよね、あっちは。だから東京と感覚がちがうんだよね。単純に比べられない わけ。それをイギリスでパンクっていえば、じゃあ東京パンクはどうだろう、ってな感じじゃない。全然足下が違うのにさ。

(東京ロッカーズという枠組みの中から差別化する戦略は?)
東京ロッカーズとして活動してきたから、そういうのは仕方ないと思うよね。50%は自分達の責任だよね。だけど、バンドの特徴を出すのは、例えばそういっ たお祭りみたいなコンサートの中でもやっていくことはできるんだよね。自分達は自分達のやり方を持ってるって意識してればかまわない。自分達のやり方を考 えてないのは解散しちゃうんじゃないかな。"東京ロッカーズ"って言われてもその中で違いを出して行くことだと思うよね。結局、フリクションは違うんだ よ、という主張は音が違うという事で、それはジャケットから歩き方からすべてのセンスに表われるよね。

(日本のロックについて)
あっ、それはおもしろんだよ。"日本のロック"なんていってもそんなものは全然ないんだよね。雑誌の上にあるだけでさ。ステージ上だけそれらしくて、それ か、レコードだけロックで、一つドアをあけて自分の部屋から出たらロックなんてどこにもないんだよね。だけどオバサン達が買い物カゴさげて歩いてる、それ が日本のロックなのかもしれないよ。でさ東京に住んでんだったら俺はそういう状況から逃げられない訳じゃない。なのに日本のロックってそれからの逃避とし ての物だと思うわけ。部屋の中できいててもそれはロックじゃないんだよね。頭の中だけロックしたってどうしようもないんだ。
俺は日本人である事は出てくると思うわけ。詩も無理して日本語にしたりする必要ないんじゃない。英語は生活に混じっているんだから。

(バンドで生計をたてていけるか?)
全然考えてないね。日本では絶対無理だと思うよ。あきらめてる訳じゃないけど、自然にそうなるんでなきゃダメだね。だからバイトしているんだけども、東京 だったらやっぱりそれが状況な訳で、それが俺達の音の一部をなしてる訳よ。フリクション・サウンドの一部なんだよ。そういう状況でなくなりゃ、音も変るけ どね。
そう。そういうふうな東京の構造を変えていくためにもね、東京でパンク以降出てきた新しいバンドを取りあげてって欲しいよね。

(最後にいっておきたいことは?)
これはロッキング・オンに載るわけでしょ。そしたらさ、俺達の話し言葉をそのままのっけて欲しいんだよね。文法なんかまちがっててもいいから。

(ヒゲ)文の方が勝っちゃってるでしょ今は。若い人だったらもっと自分自身のアンテナで感触をつかんでいって欲しいよね。例えばね、渋谷陽一さんがこう書 いているから僕の意見もこうだ、じゃなくてね。ライブハウスなんか来ても他人の評価ってものをあらかじめ聞いてくるから、自分なりの自然な態度を示せない んだよね。

一人一人が自分の立場で拍手したり、感じたりできなきゃ何も変ってかないよね。日本人って、映画とか文学とかみんないろいろ知りすぎてて何も手を出せない みたいなのね。でも重要なのは自分がやってみるって事だね。ニューヨークなんかと比較しても東京はつまんないと言ってる人は多いけど、それはその人自身に 責任があるわけ。でさ、そういった構造自体を変えていくためにも音楽っていうのは非常にいいショックだと思うわけ。

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